RIYO BOOKS

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主に本の感想文を書きます。海外文学が多めです。

2023-01-01から1年間の記事一覧

『サー・トマス・モア』ウィリアム・シェイクスピア 他 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 サー・トマス・モア(1478-1535)は十六世紀に法律家として活躍した思想家です。ロンドンの法律家のもとで生まれ、裕福な環境のなかで育てられました。オックスフォード大学で古典の哲学や文学を学びました…

『お気に召すまま』ウィリアム・シェイクスピア 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 本作『お気に召すまま』の種本は、トマス・ロッジ『ロザリンド』(1590)と、作者不詳の物語詩『ギャミリン物語』(1400)が用いられています。両作品に描かれる残虐な死の場面や、淫蕩で不幸な場面などはシ…

『アントニーとクレオパトラ』ウィリアム・シェイクスピア 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 本作『アントニーとクレオパトラ』は、『ジュリアス・シーザー』の後の舞台を描いており、これらを二部作と括る場合もあります。シェイクスピアは『ジュリアス・シーザー』を転換点として、その作風に強く深…

『青い鳥』モーリス・メーテルリンク 感想

こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 クリスマスイヴ、貧しい木こりの子チルチルとミチルの部屋に醜い年寄の妖女が訪れた。「これからわたしの欲しい青い鳥を探しに行ってもらうよ」ダイヤモンドのついた魔法の帽子をもらった二人は、光や犬や猫…

『寝取られ宗介』つかこうへい 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 旅回り一座の座長・宗介は、ずっと籍を入れないままの女房レイ子と一座の若い男とをくっつける。そして、駆け落ちに破れて戻って来るレイ子をやさしく受け入れることで夫婦愛を確認していた。寝取られ亭主の…

『ロウソクの科学』マイケル・ファラデー 感想

こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 たった一本のロウソクをめぐりながら、ファラデーはその種類、製法、燃焼、生成物質を語ることによって、自然との深い交りを伝えようとする。ファラデーは貧しい鍛冶屋の子供に生まれたが、苦労して一大科学…

『神々自身』アイザック・アシモフ 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 西暦2070年、タングステンと交換に〈平行宇宙〉からプルトニウム186がもたらされることが判明した。われわれの宇宙に存在しないこの物質は、無公害で低コスト、しかも無尽蔵のエネルギー源として歓迎され、…

『プラテーロとわたし』フアン・ラモン・ヒメネス 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 真っ青な空と真っ白な家が目にいたいほど明るい、太陽の町モゲール。首都マドリードで健康を害したヒメーネスは、アンダルシアの故郷の町の田園生活の中で、読書と瞑想と詩作に没頭した。月のように銀いろの…

『バッハの生涯と芸術』ヨハン・ニコラウス・フォルケル 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 音楽家フォルケルの手に成る本書(1802)は、バッハの生涯を略述した上で、作品、作曲の方法、演奏の仕方、弟子の養成等について語り、ドイツの国民的財産としてのバッハを顕彰した最初の本格的評伝。諸処に…

『ユモレスク』久生十蘭 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 現役の作家のなかにも熱狂的なファンの少なくない、鬼才、久生十蘭の精粋を、おもに戦後に発表された短篇から厳選。世界短篇小説コンクールで第一席を獲得した「母子像」、幻想性豊かな「黄泉から」、戦争の…

『情事の終り』グレアム・グリーン 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 私たちの愛が尽きたとき、残ったのはあなただけでした。彼にも私にも、そうでした──。中年の作家ベンドリクスと高級官吏の妻サラァの激しい恋が、始めと終りのある〝情事〟へと変貌したとき、〝あなた〟は出…

『自省録』マルクス・アウレリウス 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 アウレーリウスはローマ皇帝で哲人。蕃族の侵入や叛乱の平定のために東奔西走したが、わずかにえた孤独の時間に自らを省み、日々の行動を点検し、ストアの教えによって新たなる力を得た。本書は静かな瞑想の…

『海の沈黙』ヴェルコール 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 ナチ占領下のフランス国民は、人間の尊厳と自由を守るためにレジスタンス運動を起こした。ヴェルコールはこの抵抗運動の中から生まれた作家である。ナチとペタン政府の非人間性を暴露したこの2篇は、強いら…

『金沢』吉田健一 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 金沢の町の路次にさりげなく家を構えて、心赴くまま名酒に酔い、九谷焼を見、程よい会話の興趣に、精神自由自在となる〝至福の時間〟の体験を深まりゆく独特の文体で描出した名篇『金沢』。灘の利き酒の名人…

『ペドロ・パラモ』フアン・ルルフォ 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 ペドロ・パラモという名の、顔も知らぬ父親を探して「おれ」はコマラに辿りつく。しかしそこは、ひそかなささめきに包まれた死者ばかりの町だった……。生者と死者が混交し、現在と過去が交錯する前衛的な手法…

『日々の泡』ボリス・ヴィアン 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 愛を語り、友情を交わし、人生の夢を追う、三組の恋人たち──純情無垢のコランと彼の繊細な恋人のクロエ。愛するシックを魅了し狂わせる思想家の殺害をもくろむ情熱の女アリーズ。料理のアーティストのニコラ…

『すばらしい新世界』オルダス・ハクスリー 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 すべてを破壊した〝九年戦争〟の終結後、暴力を排除し、共生・個性・安定をスローガンとする清潔で文明的な世界が形成された。人間は受精卵の段階から選別され、5つの階級に分けられて徹底的に管理・区別さ…

『風立ちぬ』堀辰雄 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 風のように去ってゆく時の流れの裡に、人間の実体を捉えた『風立ちぬ」は、生きることよりは死ぬことの意味を問い、同時に死を越えて生きることの意味をも問うている。バッハの遁走曲に思いついたという『美…

『濁った頭』志賀直哉 感想

こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 明治37年の『菜の花と小娘』から大正3年の『児を盗む話』まで、著者の作家的自我確立の営みの跡をたどる短編集第一集。瓢箪が好きでたまらない少年と、それをにがにがしく思う父や師との対立を描く初期短編…

『女ひと』室生犀星 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 「夏になると女の人の声にひびきがはいり、張りを帯びてうつくしくなる」。声、二の腕、あくび、死顔、そして蛇、齢六十を超えた作家が抱き続ける「女ひと」への尽きぬ思い、美男というにはほど遠い自分が女…

『つゆのあとさき』永井荷風 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 銀座のカフェーの女給君江は、容貌は十人並だが物言う時、「瓢の種のような歯の間から、舌の先を動かすのが一際愛くるしい」女性である。この、淫蕩だが逞しい生活力のある主人公に、パトロンの通俗作家清岡…

『二十歳の原点』高野悦子 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 独りであること、未熟であることを認識の基点に、青春を駆けぬけていった一女子大生の愛と死のノート。学園紛争の嵐の中で、自己を確立しようと格闘しながらも、理想を砕かれ、愛に破れ、予期せぬうちにキャ…

『ジュリアス・シーザー』ウィリアム・シェイクスピア 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 プルターク英雄伝を概ねの種本として描かれた本作『ジュリアス・シーザー』は、シェイクスピアにとって絶頂期に差し掛かろうとする成長著しい時期に執筆されました。『空騒ぎ』『十二夜』などの喜劇、『ヘン…

『堕落論』坂口安吾 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 単に、人生を描くためなら、地球に表紙をかぶせるのが一番正しい──誰もが無頼派と呼んで怪しまぬ安吾は、誰よりも冷徹に時代をねめつけ、誰よりも自由に歴史を嗤い、そして誰よりも言葉について文学について…

『リチャード三世』ウィリアム・シェイクスピア 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 あらゆる権謀術数を駆使して王位を狙う魔性の君主リチャード──薔薇戦争を背景に偽善と偽悪をこえた近代的悪人像を確立した史劇。 1339〜1453年まで続いたプランタジネット家(イギリス)とヴァロワ家(フラ…

『間違いの喜劇』(間違いつづき)ウィリアム・シェイクスピア 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 本作『間違いの喜劇』(間違いつづき)はシェイクスピア作品の中でも初期に執筆された喜劇で、最も短い作品として知られています。古代ローマの喜劇作家プラウトゥスの「メナエクムス兄弟』という双子の人違…

『みずうみ』テオドール・シュトルム 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 月光に浮かび上がる少女エリーザベトの肖像。老学究ラインハルトはいま少年の日の昔にいる。あの頃は2人だけでいるとよく話がとぎれた。それが自分には苦しくて、何とかしてそうならないように努めた。──若…

『ママ・アイラブユー』ウィリアム・サローヤン 感想

こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 あたしの名前はキラキラヒメ。ニューヨーク・ジャイアンツのエースを日指す九歳の女の子。パパと別れてプロードウェイのスター女優を夢見るママ・ガールに連れられて、ある夜突然、カリフォルニアからニュー…

『華氏451度』レイ・ブラッドベリ 感想

こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 焚書官モンターグの仕事は、世界が禁じている〝本〟を見つけて焼き払うことだった。本は忌むべき禁制品とされていたのだ。人々は耳にはめた超小型ラジオや大画面テレビを通して与えられるものを無条件に受け…

『檸檬』梶井基次郎 感想

こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 31歳という若さで夭折した著者の残した作品は、昭和文学史上の奇蹟として、声価いよいよ高い。その異常な美しさに魅惑され、買い求めた一顆のレモンを洋書店の書棚に残して立ち去る『檸檬』、人間の苦悩を…

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