RIYO BOOKS

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主に本の感想文を書きます。海外文学が多めです。

読了-日本近代文学

『野火』大岡昇平 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 敗北が決定的となったフィリピン戦線で結核に冒され、わずか数本の芋を渡されて本隊を追放された田村一等兵。野火の燃えひろがる原野を彷徨う田村は、極度の飢えに襲われ、自分の血を吸った蛭まで食べたあげ…

「春と修羅」宮沢賢治 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 「無声慟哭」を中心として、死と愛を主題とする抒情詩を詠いあげ、詩人として開花した著者の「春と修羅」第1集。貧しい東北農村へ献身した時期「稲作挿話」「和風は河谷いっぱいに吹く」の秀作を収めた第3…

『蟹工船』小林多喜二 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 秋田で貧しい小作農を営んでいた両親のもとで、小林多喜二(1903-1933)は生まれました。伯父が小樽で工場などの事業を成功させると、彼が苦労を掛けていた多喜二の両親に安定した生活を提供するために小樽…

『武蔵野』国木田独歩 感想

こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 武蔵野を逍遥しながら独歩は愛着をこめて「生活と自然とがこのように密接しているところがどこにあるか」と言っている。作者は、常に自然を通じて人生を、また人間を通じて自然を見、その奥に拡がる広々とし…

『海賊船』岡本綺堂 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 元は徳川の御家人であり、明治維新ののちに英国公使館で日本語書記を務めていた父親のもとで岡本綺堂(1872-1939)は生まれました。士族らしく彼は漢文や漢詩を習う一方で、父親と同じように英国公使館で働…

『生まれいずる悩み』有島武郎 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 「私たちの愛はお前たちを暖め、慰め、励まし、人生の可能性をお前たちの心に味覚させずにはおかないと私は思っている」──妻を失った作者が残された愛児にむかって切々と胸中を吐露した名篇『小さき者へ』。…

『牡丹燈籠』三遊亭圓朝 感想

こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 旗本の娘お露の死霊が、燈籠を提げカランコロンと下駄を鳴らして恋人新三郎のもとに通うという有名な怪異談を、名人円朝の口演そのままに伝える。人情噺に長じた三遊亭圓朝が、「伽婢子」中にある一篇に、天…

『風立ちぬ』堀辰雄 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 風のように去ってゆく時の流れの裡に、人間の実体を捉えた『風立ちぬ」は、生きることよりは死ぬことの意味を問い、同時に死を越えて生きることの意味をも問うている。バッハの遁走曲に思いついたという『美…

『濁った頭』志賀直哉 感想

こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 明治37年の『菜の花と小娘』から大正3年の『児を盗む話』まで、著者の作家的自我確立の営みの跡をたどる短編集第一集。瓢箪が好きでたまらない少年と、それをにがにがしく思う父や師との対立を描く初期短編…

『女ひと』室生犀星 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 「夏になると女の人の声にひびきがはいり、張りを帯びてうつくしくなる」。声、二の腕、あくび、死顔、そして蛇、齢六十を超えた作家が抱き続ける「女ひと」への尽きぬ思い、美男というにはほど遠い自分が女…

『つゆのあとさき』永井荷風 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 銀座のカフェーの女給君江は、容貌は十人並だが物言う時、「瓢の種のような歯の間から、舌の先を動かすのが一際愛くるしい」女性である。この、淫蕩だが逞しい生活力のある主人公に、パトロンの通俗作家清岡…

『檸檬』梶井基次郎 感想

こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 31歳という若さで夭折した著者の残した作品は、昭和文学史上の奇蹟として、声価いよいよ高い。その異常な美しさに魅惑され、買い求めた一顆のレモンを洋書店の書棚に残して立ち去る『檸檬』、人間の苦悩を…

『お目出たき人』武者小路実篤 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 自分は女に、餓えている。この餓えを自分は、ある美しい娘が十二分に癒してくれるものと、信じて疑わない。実はいまだに口をきいたことすらなく、この一年近くは姿を目にしてもいない、いや、だからこそます…

『高野聖』泉鏡花 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 魔と夢が交錯するエロスと幻想の世界!飛騨から信州へ、峠をたどる旅の僧が、美しい女の住む山中の一軒家で一夜の宿を乞う。その夜……。 ジャン=ジャック・ルソーの著作を発端として西洋で活発化したロマン…

『雁』森鷗外 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 生まれてすぐに母を亡くし、貧困の中で父親に育てられたおとなしい娘お玉、父親に楽をさせたいと高利貸し末造の妾となった。上野不忍池にほど近い無縁坂にひっそりと住むお玉は、やがて、毎夕の散歩の道すが…

『現代日本の開化』夏目漱石 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 圧倒的に優位な西洋文明を相手に漱石は「自己本位」の立場を同時代のだれにもまして痛切に生きた。その苦闘の跡を示す『現代日本の開化』『私の個人主義』などの講演記録を中心に、かれの肉声ともいうべき日…

『獨樂園』薄田泣菫 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 詩集『白羊宮』などで象徴派詩人として明治詩壇に一時代を劃した薄田泣菫は、大阪毎日新聞に勤めてコラム「茶話」を連載し、好評を博する。人事に材を得た人間観察から、やがて自然や小動物を対象にした静謐…

『河鍋暁斎』ジョサイア・コンドル 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 幕末明治期の天才画家河鍋暁斎。その群を抜いた画力に惹かれた弟子の中には、かの鹿鳴館の設計者コンドルがいた。「暁英」の画号を持つ愛弟子が、親しく接した師の姿と、文明開化の中で廃絶した日本画の技法…

『ドグラ・マグラ』夢野久作 感想

こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 夢野久作『ドグラ・マグラ』です。 日本の三大奇書と言われる内の一冊です。 「ドグラ・マグラ」は、昭和10年1500枚の書き下ろし作品として出版され、読書界の大きな話題を呼んだが、常人の頭では考えられ…

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