RIYO BOOKS

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主に本の感想文を書きます。海外文学が多めです。

読了-フランス文学

『マドゥモァゼル・ルウルウ』ジィップ 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 天衣無縫、そして奔放。森茉莉が愛してやまなかった14歳の貴族の少女、おてんばルウルウの大冒険。 十八世紀のフランスでは、ルネサンスによって興った人間解放という思想が宗教に及び、永く続いていた封…

『レ・ミゼラブル』ヴィクトル=マリー・ユーゴー 感想

こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 貧しさにたえかねて一片のパンを盗み、十九年を牢獄ですごさねばならなかったジャン・ヴァルジャン。出獄した彼は、ミリエル司教の館から銀の食器を盗み出すが、神のように慈悲ぶかい司教の温情は翻然として…

『青い鳥』モーリス・メーテルリンク 感想

こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 クリスマスイヴ、貧しい木こりの子チルチルとミチルの部屋に醜い年寄の妖女が訪れた。「これからわたしの欲しい青い鳥を探しに行ってもらうよ」ダイヤモンドのついた魔法の帽子をもらった二人は、光や犬や猫…

『海の沈黙』ヴェルコール 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 ナチ占領下のフランス国民は、人間の尊厳と自由を守るためにレジスタンス運動を起こした。ヴェルコールはこの抵抗運動の中から生まれた作家である。ナチとペタン政府の非人間性を暴露したこの2篇は、強いら…

『日々の泡』ボリス・ヴィアン 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 愛を語り、友情を交わし、人生の夢を追う、三組の恋人たち──純情無垢のコランと彼の繊細な恋人のクロエ。愛するシックを魅了し狂わせる思想家の殺害をもくろむ情熱の女アリーズ。料理のアーティストのニコラ…

『ラブイユーズ』オノレ・ド・バルザック 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 元近衛竜騎兵のフィリップは、酒や賭博に興じ、勤め先や家族の金を使い込んだ挙げ句、軍の謀議に関与して収監される始末。息子を溺愛する母は、釈放に必要な金を工面しようと実家の兄に援助を求めるが、そこ…

『薔薇日記』トニー・デュヴェール 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 眩ゆい陽光と熱気のなか、何の遠慮も、隠しだてもなく描かれた少年愛の世界──無垢な魂の際限のない性の形。 スペインの仮面の街、静かな夜の裏通りで、私は毎日少年たちを選ぶ。無邪気で飾り気のない少年た…

『タルチュフ』モリエール 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 金満家のオルゴンは、自称零落貴族のタルチュフを信頼して家政全般をまかせ、娘と結婚させようとまでする。タルチュフはといえば敬虔な信心家をよそおってオルゴンをたぶらかし、財産横領を策し、妻にも言い…

『青い麦』シドニー=ガブリエル・コレット 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 ブルターニュの海岸に毎年避暑にやって来る16歳の少年フィルと清純な少女ヴァンカは、芽ばえ始めた異性愛にとまどう。フィルは知り合った美しい中年女性の別荘を訪れ、はじめて時間をすごすが、ヴァンカは…

『孤独な散歩者の夢想』ジャン=ジャック・ルソー 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 十八世紀以降の文学と哲学はルソーの影響を無視しては考えられない。しかし彼の晩年はまったく孤独であった。人生の長い路のはずれに来て、この孤独な散歩者は立ちどまる。彼はうしろを振返り、また目前にせ…

『エッフェル塔の潜水夫』ピエール=アンリ・カミ 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 セーヌの川底からお化け潜水夫に水死体が運び去られた。それを目撃したヴァランタン・ムーフラールも水死体となって、所もあろうにエッフェル塔の上に現われ、おまけに幽霊船『飛び行くオランダ人』号船長の…

『地獄の季節』アルチュール・ランボオ 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 16歳にして第一級の詩をうみだし、数年のうちに他の文学者の一生にも比すべき文学的燃焼をなしとげて彗星のごとく消え去った詩人ランボオ。ヴェルレーヌが「非凡な心理的自伝」と評した散文詩『地獄の季節…

『居酒屋』エミール・ゾラ 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 洗濯女ジェルヴェーズは、二人の子供と共に、帽子屋ランチエに棄てられ、ブリキ職人クーポーと結婚する。彼女は洗濯屋を開くことを夢見て死にもの狂いで働き、慎ましい幸福を得るが、そこに再びランチエが割…

『悪の華』シャルル=ピエール・ボードレール 感想

こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 ボオドレール(1821-67)に至ってフランス詩は国境をこえ、やがて詩人は世界のあらゆる近代詩の源流に位置することとなる。代表作『悪の華』の初版(1857)は猥褻と冒瀆のかどで6篇の詩の削除を命じられ、…

『危険な関係』ピエール・ショデルロ・ド・ラクロ 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 十八世紀、頽廃のパリ。名うてのプレイボーイの子爵が、貞淑な夫人に仕掛けたのは、巧妙な愛と性の遊戯。一途な想いか、一夜の愉悦かーー。子爵を慕う清純な美少女と妖艶な貴婦人、幾つもの思惑と密約が潜み…

『氷山へ』ジャン=マリ・ギュスターヴ・ル・クレジオ 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 2008年にノーベル文学賞を受賞したル・クレジオの思考と実践に大きな影響を与えた孤高の詩人アンリ・ミショー。彼の至高の詩篇「氷山」「イニジ」について、ル・クレジオが包括的かつ詩的に綴った珠玉の批評…

『脂肪の塊』ギ・ド・モーパッサン 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 プロシア軍を避けてルーアンの町を出た馬車に、“脂肪の塊”と渾名(あだな)される可憐な娼婦がいた。空腹な金持たちは彼女の弁当を分けてもらうが、敵の士官が彼女に目をつけて一行の出発を阻むと、彼女を犠…

『ベートーヴェンの生涯』ロマン・ロラン 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 少年時代からベートーヴェンの音楽を生活の友とし、その生き方を自らの生の戦いの中で支えとしてきたロマン・ロラン(1866-1944)によるベートーヴェン賛歌。二十世紀の初頭にあって、来るべき大戦の予感の…

『C神父』(蠱惑の夜)ジョルジュ・バタイユ 感想

こんにちは。RIYOです。 今回の作品はこちらです。 つねに鋭い人間探求をめざしつつエロスと死の深淵にさまよい、特異な文学世界を創りあげた奇才バタイユの全貌をここに集大成。バタイユは燃え上がる。この彗星は、今夜もまた、ヘーゲルとニーチェの傍をよ…

『悲しみよ こんにちは』フランソワーズ・サガン 感想

こんにちは。RIYOです。 今回の作品はこちらです。 太陽がきらめく、美しい南仏の海岸を舞台に、青春期特有の残酷さをもつ少女の感傷にみちた好奇心、愛情の独占欲、完璧なものへの反撥などの微妙な心理を描く。発表と同時に全世界でベストセラーとなり、文…

『法王庁の抜け穴』アンドレ・ジイド 感想

こんにちは。RIYOです。 今回の作品はこちらです。 無償の行為を実践して意味なき殺人をするラフカディオ、奇蹟により改宗したアンティムの破綻、地下室に幽閉されている法王を救い出すためと称して詐欺を働くプロトス……。複雑多岐な事件の発展の中に、人間…

『肉体の悪魔』レイモン・ラディゲ 感想

こんにちは。RIYOです。 今回の作品はこちらです。 青年期の複雑な心理を、ロマンチシズムへの耽溺を冷徹に拒否しつつ仮借なく解剖したラディゲ16歳から18歳のときまでの驚くべき作品。第一次大戦のさなか、戦争のため放縦と無力におちいった少年と人妻との…

『雨のしのび逢い』マルグリット・デュラス 感想

こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 若い未婚の女性は結婚に憧れている。だが、若い女性たちの夢見ているほど、安定したものだろうか。また純粋な状態のものだろうかーーこうした疑いを抱いた方はこの小説を読まれるといい。この小説の主題は…

『オンディーヌ』ジャン・ジロドゥ 感想

こんにちは。RIYOです。 今回の作品はこちらです。 浅利慶太さんが劇団四季の運営を離れ「浅利演出事務所」として始動した初めの作品、現代フランス演劇を代表する劇作家ジャン・ジロドゥ(1882-1944)の『オンディーヌ』です。 舞台は遠い世の昔から神秘な…

『シルトの岸辺』ジュリアン・グラック 感想

こんにちは。RIYOです。 今回の作品はこちらです。 著者最大の長篇かつ最も劇的な迫力に富む代表作。1951年度のゴンクール賞に選ばれたが、グラックは受賞を拒否、大きな話題を呼んだ。「この小説は、その最後の章まで、けっして火ぶたの切られない一つの海…

『椿姫』デュマ・フィス 感想

こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 その花を愛するゆえに〝椿姫〟と呼ばれる、貴婦人のように上品な、美貌の娼婦マルグリット・ゴーティエ。パリの社交界で、奔放な日々を送っていた彼女は、純情多感な青年アルマンによって、真実の愛に目覚…

『明るい部屋 写真についての覚書』ロラン・バルト 感想

こんにちは。RIYOです。 今回の作品はこちらです。 フランスの哲学者であり記号学者、そしてポスト構造主義として理論を進化させ続け、ミシェル・フーコーに多大な影響を与えた探求者ロラン・バルトの「写真」について論考した『明るい部屋』です。 本書は、…

『少女ムーシェット』ジョルジュ・ベルナノス 感想

こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 死んでゆく少女への哀歌。スペイン戦争の暴力と悲惨を目撃した巨匠ベルナノスがその憤りを芸術として結晶させた珠玉の傑作。 普仏戦争に敗北したフランス第三共和政は資本輸出を中心に金策を図り、急速に国…

『月と六ペンス/ノア・ノア』サマセット・モーム/ポール・ゴーギャン 感想

こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの2作品です。 晩年をタヒチで過ごし、死後に才能を称えられた総合主義・象徴主義を代表する画家ポール・ゴーギャン。その紀行文『ノア・ノア』と、彼の資質や魂を原型に、芸術を真に追い求める奇異な一人の画家を描いた…

『ビュビュ・ド・モンパルナス』シャルル=ルイ・フィリップ 感想

こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 ドストエフスキーの肖像を掲げ、その作風のように激しく当時のフランスを生きたフィリップ。35歳という短い人生の中で生み出した、美しいプロレタリアート文学の代表作『ビュビュ・ド・モンパルナス』です…

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