RIYO BOOKS

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主に本の感想文を書きます。海外文学が多めです。

2023-01-01から1年間の記事一覧

『ラブイユーズ』オノレ・ド・バルザック 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 元近衛竜騎兵のフィリップは、酒や賭博に興じ、勤め先や家族の金を使い込んだ挙げ句、軍の謀議に関与して収監される始末。息子を溺愛する母は、釈放に必要な金を工面しようと実家の兄に援助を求めるが、そこ…

『青い花』ノヴァーリス 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 ある夜、青年ハインリヒの夢にあらわれた青い花。その花弁の中に愛らしい少女の顔をかいま見た時から、彼はやみがたい憧れにとらえられて旅に出る。それは彼が詩人としての自己にめざめてゆく内面の旅でもあ…

『薔薇日記』トニー・デュヴェール 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 眩ゆい陽光と熱気のなか、何の遠慮も、隠しだてもなく描かれた少年愛の世界──無垢な魂の際限のない性の形。 スペインの仮面の街、静かな夜の裏通りで、私は毎日少年たちを選ぶ。無邪気で飾り気のない少年た…

『毒の園』フョードル・ソログープ 感想

こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 ロシア前期象徴主義を代表する詩人・作家ソログープ。影絵やかくれんぼに夢中になる少年少女たち…..。汚濁に染まらない者たちは美しいまま醜い現実によって死んでいく。夢と現実の交錯、美と醜、生と死の対…

『オリエンタリズム』エドワード・ワディン・サイード 感想

こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 ヨーロッパのオリエントに対するものの見方・考え方に連綿と受け継がれてきた思考様式──その構造と機能を分析するとともに、厳しく批判した問題提起の書。 「オリエンタリズム」とは東洋趣味という意味合い…

『お目出たき人』武者小路実篤 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 自分は女に、餓えている。この餓えを自分は、ある美しい娘が十二分に癒してくれるものと、信じて疑わない。実はいまだに口をきいたことすらなく、この一年近くは姿を目にしてもいない、いや、だからこそます…

『ギルガメシュ叙事詩』(古代オリエント文学作品) 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 初期楔形文字で記されたシュメールの断片的な神話に登場する実在の王ギルガメシュの波乱万丈の物語。分身エンキドゥとの友情、杉の森の怪物フンババ退治、永遠の生命をめぐる冒険、大洪水などのエピソードを…

『一九八四年』ジョージ・オーウェル 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 〈ビッグ・ブラザー〉率いる党が支配する超全体主義的近未来。ウィンストン・スミスは真理省記録局に勤務する党員で、歴史の改竄が仕事だった。しかし彼は、以前より完璧な屈従を強いる体制に不満を抱いてい…

『高野聖』泉鏡花 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 魔と夢が交錯するエロスと幻想の世界!飛騨から信州へ、峠をたどる旅の僧が、美しい女の住む山中の一軒家で一夜の宿を乞う。その夜……。 ジャン=ジャック・ルソーの著作を発端として西洋で活発化したロマン…

『雁』森鷗外 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 生まれてすぐに母を亡くし、貧困の中で父親に育てられたおとなしい娘お玉、父親に楽をさせたいと高利貸し末造の妾となった。上野不忍池にほど近い無縁坂にひっそりと住むお玉は、やがて、毎夕の散歩の道すが…

『冬物語』ウィリアム・シェイクスピア 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 シチリア王レオンティーズは妻のハーマイオニと親友のボヘミア王ポリクシニーズの不義を疑い嫉妬に狂う。しかし侍女のポーライナから王妃の死の知らせが届き、後悔と悲嘆にくれる。時は移り、十六年後一同は…

『十二夜』ウィリアム・シェイクスピア 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 『十二夜』(Twelfth Night, or What You Will 十二夜、もしくはお望みのもの)は1600-1601年ごろに執筆されたと見られており、『ハムレット』の前、つまり「悲劇時代」の直前であり、「喜劇時代」の締め括…

『空騒ぎ』ウィリアム・シェイクスピア 感想

こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 青年貴族クローディオーと知事の娘ヒーローのめでたい婚礼の前夜、彼女に横恋慕するドン・ジョンの奸計から大騒動がまきおこる『空騒ぎ』。 貴族レオナートーは美しき娘ヒーローと、才気煥発な姪ベアトリス…

『方法序説』ルネ・デカルト 感想

こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 すべての人が真理を見いだすための方法を求めて、思索を重ねたデカルト。「われ思う、ゆえにわれあり」は、その彼がいっさいの外的権威を否定して到達した、思想の独立宣言である。近代精神の確立を告げ、今…

『タルチュフ』モリエール 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 金満家のオルゴンは、自称零落貴族のタルチュフを信頼して家政全般をまかせ、娘と結婚させようとまでする。タルチュフはといえば敬虔な信心家をよそおってオルゴンをたぶらかし、財産横領を策し、妻にも言い…

『ピーター・パン』ジェームズ・バリー 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 人間と妖精の合いの子で永遠に子供のままのピーターは、生れて7日目に窓から逃げ出して小鳥や妖精たちの仲間入りをし、不思議な冒険の旅に出る……。幻想の世界の中でさまざまな経験をしながら、楽しく飛び歩…

『阿Q正伝』魯迅 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 魯迅が中国社会の救い難い病根と感じたもの、それは儒教を媒介とする封建社会であった。狂人の異常心理を通してその力を描く『狂人日記』。阿Qはその病根を作りまたその中で殺される人間である。こうしたや…

『優雅な獲物』ポール・ボウルズ 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 カポーティ、マキナニー、オーネット・コールマン、ベルトリッチ……遥かモロッコから、現代芸術に常に豊かな霊感を送り続けるアメリカ文学界の隠者。80年代に入り、ブームとも言える再評価が行われ、全作品が…

『病気の通訳』(停電の夜に)ジュンパ・ラヒリ 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 闇につつまれたキッチンをほのかに照らす蝋燭の灯り。停電の夜ごと、秘密の話を打ち明けあった二人は、ふたたびよりそって生きることができるのか。──表題作ほか、O・ヘンリー賞受賞の「病気の通訳」等全九…

『闇の奥』ジョゼフ・コンラッド 感想

こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 アフリカ奥地の貿易会社出張所にやってきた船乗りマーロウが耳にしたのは、最奥部の出張所をあずかる腕ききの象牙採取人クルツの噂だった。折しも音信を絶ったクルツの救出に向かうマーロウ一向の前に、死と…

『黄金虫変奏曲』リチャード・パワーズ 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 たった四つの文字から「畏るべき豊穣」を生む遺伝情報と、バッハのゴルトベルク変奏曲。その二つの構造の不思議なまでの符合を鋳型にして、精巧なロマンスとサスペンスが紡ぎ出される。1957年、遺伝暗号の解…

『赤い髪の女』ヤン・ウォルカーズ 感想

こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 ソロモンの雅歌にある輝く小麦のあいだに茶色の豆を置いたようにそばかすの散らばる彼女の胸部は、なだらかな曲線を描き、その下で少しへこんでから、ふたたび少女の小さな乳房のような弾力のある丘をつくっ…

『林檎の樹』ジョン・ゴールズワージー 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 銀婚式の日、妻と共に若い日の思い出の地を訪れた初老のアシャーストの胸に去来するものは、かつて月光を浴びて花咲く林檎の樹の下で愛を誓った、神秘的なまでに美しい、野生の乙女ミーガンのおもかげ、かえ…

『青い麦』シドニー=ガブリエル・コレット 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 ブルターニュの海岸に毎年避暑にやって来る16歳の少年フィルと清純な少女ヴァンカは、芽ばえ始めた異性愛にとまどう。フィルは知り合った美しい中年女性の別荘を訪れ、はじめて時間をすごすが、ヴァンカは…

『哀詩 エヴァンジェリン』ヘンリー・ワズワース・ロングフェロー 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 十八世紀半ばの北米。英仏の植民地争奪戦により引き裂かれた恋人たちが、互いを探し求め、すれ違う悲しい運命を描いた物語詩。 十七世紀末よりイギリスとフランスによって引き起こされた英仏植民地戦争は、…

『孤独な散歩者の夢想』ジャン=ジャック・ルソー 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 十八世紀以降の文学と哲学はルソーの影響を無視しては考えられない。しかし彼の晩年はまったく孤独であった。人生の長い路のはずれに来て、この孤独な散歩者は立ちどまる。彼はうしろを振返り、また目前にせ…

『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』フィリップ・K・ディック 感想

こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 第三次対戦後、放射能灰に汚された地球では、生きている動物を所有することが地位の象徴となっていた。人工の電気羊しかもっていないリックは、本物の動物を手に入れるため、火星から逃亡してきた〈奴隷〉ア…

『エッフェル塔の潜水夫』ピエール=アンリ・カミ 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 セーヌの川底からお化け潜水夫に水死体が運び去られた。それを目撃したヴァランタン・ムーフラールも水死体となって、所もあろうにエッフェル塔の上に現われ、おまけに幽霊船『飛び行くオランダ人』号船長の…

『現代日本の開化』夏目漱石 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 圧倒的に優位な西洋文明を相手に漱石は「自己本位」の立場を同時代のだれにもまして痛切に生きた。その苦闘の跡を示す『現代日本の開化』『私の個人主義』などの講演記録を中心に、かれの肉声ともいうべき日…

『夜想曲集』カズオ・イシグロ 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 ベネチアのサンマルコ広場で演奏するギタリストが垣間見た、アメリカの大物シンガーとその妻の絆とはーーほろにがい出会いと別れを描いた「老歌手」をはじめ、うだつがあがらないサックス奏者が一流ホテルの…

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