RIYO BOOKS

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主に本の感想文を書きます。海外文学が多めです。

2021-01-01から1年間の記事一覧

『浴室』ジャン=フィリップ・トゥーサン 感想

こんにちは。RIYOです。 今回の作品はこちらです。 1985年、パリにおいてフランス文学界隈を騒がせた、新進気鋭作家ジャン=フィリップ・トゥーサンの『浴室』です。ジョン・ルヴォフによって映画化もされています。 「午後を浴室で過ごすようになった時、そ…

『室温〜夜の音楽〜』ケラリーノ・サンドロヴィッチ 感想

こんにちは。RIYOです。 今回の作品はこちらです。 劇団「ナイロン100℃」主宰者で、俳優であり、音楽家でもある多彩な奇才、ケラリーノ・サンドロヴィッチの戯曲『室温~夜の音楽~』です。 ホラーとコメディは、果たしてひとつの舞台の上に同居できるものな…

『われら』エヴゲーニイ・ザミャーチン 感想

こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 エヴゲーニイ・ザミャーチンの代表作にして問題作『われら』です。当時のロシア情勢や政治の変革を風刺し、近年まで世に姿を見せなかった作品です。 20世紀ソヴィエト文学の「異端者」ザミャーチン(1884-…

『作者を探す六人の登場人物』ルイージ・ピランデッロ 感想

こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 イタリアの劇作家ルイージ・ピランデッロの名を世界的に轟かせた戯曲『作者を探す六人の登場人物』です。初公演での大事件は大変印象的です。 ある劇団が芝居の稽古をしている最中、喪服姿の六人が舞台に乗…

『沈黙の春/センス・オブ・ワンダー』レイチェル・カーソン 感想

こんにちは。RIYOです。 今回は二作品をまとめてご紹介します。 環境運動の先駆けとなり全世界へ影響を与えたレイチェル・カーソンの『沈黙の春』、その自然を見つめる感性の必要性や重要性を次代へ託す『センス・オブ・ワンダー』です。 沈黙の春 自然を破…

『神曲』ダンテ・アリギエーリ 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 ダンテ・アリギエーリ『神曲』です。1320年ごろに書き上げられた壮大な叙事詩です。 神曲の構成 各篇の章を歌として区切り、地獄篇(序歌を含む)三十四歌、煉獄篇三十三歌、天国篇三十三歌の全百歌で構成さ…

『悪魔の恋』ジャック・カゾット 感想

こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 フランス初の幻想小説作家として名高いジャック・カゾットの『悪魔の恋』です。本書はホルヘ・ルイス・ボルヘス編纂の「バベルの図書館 19」で、序文を添えています。 悪魔が変身した美女ビヨンデッタと、…

『穴のあいた桶』プレム・ラワット 感想

こんにちは。RIYOです。 今回の作品はこちらです。 8歳のころから「父の教え」を継ぎ、全世界の今を生きる人々へ「心の平和」を説き続けてきた活動家プレム・ラワット初の著作『穴のあいた桶 Pot with the Hole』です。 親愛なる世界中の穴のあいた桶たちへ…

『クローヴィス物語』サキ 感想

こんにちは。RIYOです。 今回の作品はこちらです。 20世紀初頭のイギリス文学界において、英国の教科書にも活用されるほど大変有名な短篇作家です。アメリカのオー・ヘンリーと比較され、優れた作品群は現代でも楽しく読むことができます。 皮肉屋で悪戯好き…

『時のざわめき』オシップ・E・マンデリシュターム 感想

こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 ソビエトの闇に深く閉じ込められ、不当で非業の死を遂げたオシップ・E・マンデリシュターム。彼の残した、残すことができた僅かな作品の一つである『時のざわめき』です。 『時のざわめき』は、過去につい…

『ドリアン・グレイの肖像』オスカー・ワイルド 感想

こんにちは。RIYOです。 今回の作品はこちらです。 19世紀末に発表され、幾度も映画化された名作、オスカー・ワイルド(1856-1900)の『ドリアン・グレイの肖像』です。代表作『サロメ』も大変有名です。 舞台はロンドンのサロンと阿片窟。美貌の青年モデル…

『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』U・エーコ & J=C・カリエール 感想

こんにちは。RIYOです。 今回は対談本です。 フランスの劇作家・脚本家であるジャン=クロード・カリエールと、イタリアの記号論大学教授でありベストセラー作家であるウンベルト・エーコが、「紙の書物」に関して存分に語り合います。時に熱く、時に物悲し…

『ゴドーを待ちながら』サミュエル・ベケット 感想

こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 パリで初演された1953年より数多の議論と論考が行われてきた、アイルランド出身の劇作家サミュエル・ベケットの代表戯曲『ゴドーを待ちながら』です。世界的な「不条理演劇」の代名詞として語られる作品で…

『エウロペアナ』パトリク・オウジェドニーク 感想

こんにちは。RIYOです。 今回の作品はこちらです。 チェコの現代作家パトリク・オウジェドニークの問題作『エウロペアナ 二〇世紀史概説』です。2015年「第一回日本翻訳大賞」受賞作品です。 二〇世紀ヨーロッパの歴史を、さまざまな数字、スローガン、噂な…

『ロボット』カレル・チャペック 感想

こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 チェコの作家、ジャーナリストとして活躍したカレル・チャペックの『ロボット(R.U.R)』です。激動の時代、激動の国を生き、幅広い文学作品を世に発表しました。 ロボットという言葉はこの戯曲で生まれて…

『ブラック・コメディ』ピーター・シェーファー 感想

こんにちは。RIYOです。 今回の作品はこちらです。 イギリスの劇作家、ピーター・シェーファーの傑作戯曲『ブラック・コメディ』です。劇団四季でも「ストレートプレイ」で上演され、好評を博しました。 まず舞台は暗闇、しかし、舞台上の人物は何の不自由も…

『カルメン』プロスペル・メリメ 感想

こんにちは。RIYOです。 今回の作品はこちらです。 プロスペル・メリメ『カルメン』です。数ヶ国語を使いこなす、フランスへ初めてロシア文学を紹介した作家です。 南国スペインの情熱を象徴する美貌の女カルメン。純朴で真面目な青年ドン・ホセは、彼女と出…

『キャッツ』T・S・エリオット 感想

こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 イギリスの偉大な詩人、トーマス・スターンズ・エリオットの『キャッツ』です。邦題として『ポッサムおじさんの猫とつき合う法』と添えられています。日本では「劇団四季」のミュージカル名が広まっている…

『夜の森』デューナ・バーンズ 感想

こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 デューナ・バーンズ『夜の森』です。デカダン派女流作家として小説・戯曲などで活躍した作家です。T・S・エリオットが絶賛し、この作品の「序文」を書いています。 両大戦間のベルリン、ウィーン、パリ、ニ…

『花のノートルダム』ジャン・ジュネ 感想

こんにちは。RIYOです。 今回の作品はこちらです。 多くの犯罪に手を染めたジャン・ジュネ(1910-1986)の最初の小説『花のノートルダム』です。 「ジュネという爆弾。その本はここにある」(コクトー)。「泥棒」として社会の底辺を彷徨していたジュネは、…

『恐るべき子供たち』ジャン・コクトー 感想

こんにちは。RIYOです。 今回の作品はこちらです。 フランスの多彩な芸術家ジャン・コクトーの代表小説『恐るべき子供たち』です。詩人であり劇作家であり、美術にも秀でている「芸術のデパート」。本書には彼の数十点もの挿絵が挟まれています。 14歳のポー…

『バベットの晩餐会』イサク・ディーネセン 感想

こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 デンマークの作家、カレン・ブリクセンの『バベットの晩餐会』です。イサク・ディーネセンという名前は英語版ペンネームです。 女中バベットは富くじで当てた1万フランをはたいて、祝宴に海亀のスープやブ…

『星界の報告』ガリレオ・ガリレイ 感想

こんにちは。RIYOです。 今回の作品はこちらです。 「近代科学の父」或いは「天文学の父」と呼ばれる天才、イタリアの物理学者で哲学者のガリレオ・ガリレイ。その人生に大きな影響を及ぼした『星界の報告』です。 1610年冬、ガリレオ(1564-1642)はみずか…

『グレート・ギャツビー』F・スコット・フィッツジェラルド 感想

こんにちは。RIYOです。 今回の作品はこちらです。 F・スコット・フィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』です。 ロストジェネレーションの盛衰を、公私共に歩んだ作家の代表作です。 豪奢な邸宅に住み、絢爛たる栄華に生きる謎の男ギャツビーの胸の中に…

『巨匠とマルガリータ』ミハイル・ブルガーコフ 感想

こんにちは。RIYOです。 今回の作品はこちらです。 ミハイル・ブルガーコフ『巨匠とマルガリータ』です。近代ロシア文学の「奇書」とされる作品です。 春のモスクワに降り立つ悪魔、灼熱のゴルゴダと名無しの巨匠。首は転がり、黒猫はしゃべり、ルーブル札が…

『車輪の下』ヘルマン・ヘッセ 感想

こんにちは。RIYOです。 今回の作品はこちらです。 ヘルマン・ヘッセ『車輪の下』です。手元にある「旺文社 岩淵達治訳」が、名訳です。とても実直で原文の美しさが感じられます。現在は、旺文社自体が「旺文社文庫」を廃刊してしまい古書での入手しかできな…

『ロリータ』ウラジーミル・ナボコフ 感想

こんにちは。RIYOです。 今回の作品はこちらです。 ウラジーミル・ウラジーミロヴィチ・ナボコフの『ロリータ』です。アメリカへ亡命したロシアの作家であるナボコフの代表作。大変有名な古典作品ですが、出版までは苦難の道でした。 「ロリータ、我が命の光…

『かもめ・ワーニャ伯父さん』アントン・チェーホフ 感想

こんにちは。RIYOです。 今回の作品はこちらです。 アントン・チェーホフ『かもめ』『ワーニャ伯父さん』です。チェーホフ四大劇に数えられるニ作品。戯曲です。 恋と名声にあこがれる女優志望の娘ニーナに、芸術の革新を夢見る若手劇作家と、中年の流行作家…

『ガラスの動物園』テネシー・ウィリアムズ 感想

こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 テネシー・ウィリアムズ『ガラスの動物園』。戯曲です。1945年3月、第二次世界大戦の終焉間近にブロードウェイで上演されました。 不況時代のセント・ルイスの裏街を舞台に、生活に疲れ果てて、昔の夢を追…

『人形の家』ヘンリック・イプセン 感想

こんにちは。RIYOです。 今回の作品はこちらです。 ヘンリック・イプセン『人形の家』。戯曲です。 「あたしは、何よりもまず人間よ」ノルウェーの戯曲家イプセン(1828-1906)は、この愛と結婚についての物語のなかで、自分自身が何者なのかをまず確かめる…

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