RIYO BOOKS

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主に本の感想文を書きます。海外文学が多めです。

『しんどい月曜の朝がラクになる本』佐藤康行 紹介

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こんにちは。RIYOです。
今回は書籍のご紹介です。

 

 

現代日本の社会において、組織の中に身を投じて働く人々は、少なからず月曜日(もしくは休み明け)を迎えることに憂鬱を感じる人が大多数であると言います。休みにしたいことが多すぎる、趣味の時間をもっと長く持ちたいなど、比較的前向きな悩みで休みを求める人は「憂鬱」とは少し違う不満の感情があると思います。そうではなく、仕事の日々が訪れることに対して「気が重くなる」という人々が本書の対象です。


本書では、仕事が「しんどい」と感じる大きな原因は「人間関係」にあると提言しています。競合や性格の不一致など、明確な不健全さによる息苦しい関係性は当然ではありますが、表面的に良好に見える関係性においても、仕事を「しんどい」と感じると言います。表面上を良好に保つために、気を遣い、話題を合わせ、求められる応対をし、望まれる態度を取ろうと努めます。こういった、周囲への自己評価の維持や、対外的な自己感情の抑制が、職場に紐付いて印象付けられ、目立った問題を抱えずとも仕事を「しんどい」と感じるようになります。


著者は「真我」という考え方を提起しています。本当の自分を開発するというもので、抑圧や欺瞞から解放された真の心の姿を自己認識するというものです。三日月と満月で例えて表現されていますが、外面的に露出している他者の三日月を把握して、これが他者の全てであると判断して性格を確定させることは愚かな行いであると説いています。目に見える部分は確かに三日月ですが、光の当たっていない、つまり表面に出されていない他者のより多くの部分を見ようと努めることが大切であると言います。三日月を見て、相性が悪い、感じが悪い、生理的に受け付けない、などと判断することは軽率であり、自分に何の益も無いとしています。さらに、この三日月と満月は自分自身にも置き換えることができ、自己認識においてまだ把握できていない未知の部分、埋もれている部分を発見することが「真我」に繋がるという考えです。


その実践的な手段を明示しているのが本書です。「美点発見」という手法を中心に実例を交えて説明されていますが、本質は「三日月ではない部分を見ようとする姿勢」を養うことが説かれています。具体的には、対象人物に対して「美点」(優れた点、共感できる点など)を率先して見つけるという行為を真剣に行い、認識の幅を広げて満月の状態を理解しようというものです。心底から悪意に満ちた人などいないという考えのもとで行う徹底した性善説とも言えますが、この行為は最終的に自身の益へと繋がります。


この際の発見は思い込もうとするのではなく、実際にそうであると判断できるものに限ることが重要な点です。憶測や願望が入り混じると、観察力は養えず、事実と違った人間性が対象に構築してしまい、誤った認識を助長させる恐れがあるためです。自身が「こうである」と断定できるものだけを挙げる必要があります。自身の価値観の枠を越えて、対象の三日月の奥の人間性を見抜こうとする意識が求められます。そして、この行為は「褒める」ことではないと言います。「褒める」ことは、相手が必要であること、そして相手を上の立場から評価する行為であることに対して、「美点発見」は一人で行い、一人で完結できることに意義があります。この一人で行うという行為は、自分自身による発見や言葉は「自身の心に最も近しい位置で発せられるため」に、確実な迫真性をもって心に直接響きます。だからこそ、自身の行為が感動を呼び、迫力を与えるのだと言います。そして「美点発見」を繰り返すことによって培われる真意を表現する語彙力、態度、自信、これらが内から外へと伝播して、周囲の人間に影響を与え、居心地の良い美点に溢れた環境となることが最終的な目的となっています。


同様に、自分の中にも素晴らしい本当の自分がいるという考え方のもと、この行為の継続で誰もが本当の自分を見つけることができるとしています。自分が何かをしたいのか、何かをしたくないのか、本当は何がしたいのか、といった内面への問いかけにも繋がっていきます。そして、自分の内面を探るという機会を自らで生み出し、自身の内面に関心を持って「真我」を認識するに至ることを目指します。


現代日本の社会で溢れている心の病は「戦争の後遺症」であると著者は言います。軍事国家から敗戦によって社会がアメリカによって統制されましたが、戦争で勝つことを根本とした軍事的なインプット教育は未だに潰えず、現代にも深く根付いたままにあります。それに対して、「美点発見」という行為は自他を対象とした完全なアウトプットの鍛錬であり、自己の開発へ直接的に影響を与えます。つまり、表面上に現れることのない、汲み取ろうとしなければ見えることのない「意識」という、本来は目に見えない領域に対して、自分の心から心へと働きかけることができる重要な行為であると言えます。そして、美点を発見しようとする意識が、現実の事態を好転させていく行為へと導いて、社会での息苦しさを軽くしてくれます。


言葉には力があり、人生に語り掛ければ、人生に変化を与えることができると言います。そして、幸せになりたい、ではなく、幸せと言い切ることが大切であると言います。そして何より、言葉は自分自身に作用し、心と行動が幸せへと向かうように、自分の意識が発端となって導くことができるようになります。

 

ずっと幸せでいる方法がたったひとつあるとしたら、それは感謝する心を忘れないことです。食事がおいしくいただけること、好きな人に会えること、生きていられること。なんでもよいから、感謝する心があれば、自前でいつでも、いくらでも幸せを調達できます。

美輪明宏『愛の話 幸福の話』


自分が認めたものが現れる世界に、自分の努力で辿り着くことができます。自分は何のために生まれてきたのか、自分の本来の役割は何なのか、自分らしさとは何なのか、著者は問うように「自己の幸福」に対する自問を求めます。自分にとっての幸福は目の前に溢れているのかもしれません。

日々の生活に気疲れを感じているような方には、特に役立つと思われる本書『しんどい月曜の朝がラクになる本』。興味を持たれましたらぜひ、読んでみてください。

では。

 

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