RIYO BOOKS

RIYO BOOKS

主に本の感想文を書きます。海外文学が多めです。

読了

『金沢』吉田健一 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 金沢の町の路次にさりげなく家を構えて、心赴くまま名酒に酔い、九谷焼を見、程よい会話の興趣に、精神自由自在となる〝至福の時間〟の体験を深まりゆく独特の文体で描出した名篇『金沢』。灘の利き酒の名人…

『ペドロ・パラモ』フアン・ルルフォ 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 ペドロ・パラモという名の、顔も知らぬ父親を探して「おれ」はコマラに辿りつく。しかしそこは、ひそかなささめきに包まれた死者ばかりの町だった……。生者と死者が混交し、現在と過去が交錯する前衛的な手法…

『日々の泡』ボリス・ヴィアン 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 愛を語り、友情を交わし、人生の夢を追う、三組の恋人たち──純情無垢のコランと彼の繊細な恋人のクロエ。愛するシックを魅了し狂わせる思想家の殺害をもくろむ情熱の女アリーズ。料理のアーティストのニコラ…

『すばらしい新世界』オルダス・ハクスリー 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 すべてを破壊した〝九年戦争〟の終結後、暴力を排除し、共生・個性・安定をスローガンとする清潔で文明的な世界が形成された。人間は受精卵の段階から選別され、5つの階級に分けられて徹底的に管理・区別さ…

『風立ちぬ』堀辰雄 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 風のように去ってゆく時の流れの裡に、人間の実体を捉えた『風立ちぬ」は、生きることよりは死ぬことの意味を問い、同時に死を越えて生きることの意味をも問うている。バッハの遁走曲に思いついたという『美…

『濁った頭』志賀直哉 感想

こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 明治37年の『菜の花と小娘』から大正3年の『児を盗む話』まで、著者の作家的自我確立の営みの跡をたどる短編集第一集。瓢箪が好きでたまらない少年と、それをにがにがしく思う父や師との対立を描く初期短編…

『女ひと』室生犀星 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 「夏になると女の人の声にひびきがはいり、張りを帯びてうつくしくなる」。声、二の腕、あくび、死顔、そして蛇、齢六十を超えた作家が抱き続ける「女ひと」への尽きぬ思い、美男というにはほど遠い自分が女…

『つゆのあとさき』永井荷風 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 銀座のカフェーの女給君江は、容貌は十人並だが物言う時、「瓢の種のような歯の間から、舌の先を動かすのが一際愛くるしい」女性である。この、淫蕩だが逞しい生活力のある主人公に、パトロンの通俗作家清岡…

『二十歳の原点』高野悦子 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 独りであること、未熟であることを認識の基点に、青春を駆けぬけていった一女子大生の愛と死のノート。学園紛争の嵐の中で、自己を確立しようと格闘しながらも、理想を砕かれ、愛に破れ、予期せぬうちにキャ…

『ジュリアス・シーザー』ウィリアム・シェイクスピア 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 プルターク英雄伝を概ねの種本として描かれた本作『ジュリアス・シーザー』は、シェイクスピアにとって絶頂期に差し掛かろうとする成長著しい時期に執筆されました。『空騒ぎ』『十二夜』などの喜劇、『ヘン…

『堕落論』坂口安吾 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 単に、人生を描くためなら、地球に表紙をかぶせるのが一番正しい──誰もが無頼派と呼んで怪しまぬ安吾は、誰よりも冷徹に時代をねめつけ、誰よりも自由に歴史を嗤い、そして誰よりも言葉について文学について…

『リチャード三世』ウィリアム・シェイクスピア 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 あらゆる権謀術数を駆使して王位を狙う魔性の君主リチャード──薔薇戦争を背景に偽善と偽悪をこえた近代的悪人像を確立した史劇。 1339〜1453年まで続いたプランタジネット家(イギリス)とヴァロワ家(フラ…

『間違いの喜劇』(間違いつづき)ウィリアム・シェイクスピア 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 本作『間違いの喜劇』(間違いつづき)はシェイクスピア作品の中でも初期に執筆された喜劇で、最も短い作品として知られています。古代ローマの喜劇作家プラウトゥスの「メナエクムス兄弟』という双子の人違…

『みずうみ』テオドール・シュトルム 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 月光に浮かび上がる少女エリーザベトの肖像。老学究ラインハルトはいま少年の日の昔にいる。あの頃は2人だけでいるとよく話がとぎれた。それが自分には苦しくて、何とかしてそうならないように努めた。──若…

『ママ・アイラブユー』ウィリアム・サローヤン 感想

こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 あたしの名前はキラキラヒメ。ニューヨーク・ジャイアンツのエースを日指す九歳の女の子。パパと別れてプロードウェイのスター女優を夢見るママ・ガールに連れられて、ある夜突然、カリフォルニアからニュー…

『華氏451度』レイ・ブラッドベリ 感想

こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 焚書官モンターグの仕事は、世界が禁じている〝本〟を見つけて焼き払うことだった。本は忌むべき禁制品とされていたのだ。人々は耳にはめた超小型ラジオや大画面テレビを通して与えられるものを無条件に受け…

『檸檬』梶井基次郎 感想

こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 31歳という若さで夭折した著者の残した作品は、昭和文学史上の奇蹟として、声価いよいよ高い。その異常な美しさに魅惑され、買い求めた一顆のレモンを洋書店の書棚に残して立ち去る『檸檬』、人間の苦悩を…

『ラブイユーズ』オノレ・ド・バルザック 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 元近衛竜騎兵のフィリップは、酒や賭博に興じ、勤め先や家族の金を使い込んだ挙げ句、軍の謀議に関与して収監される始末。息子を溺愛する母は、釈放に必要な金を工面しようと実家の兄に援助を求めるが、そこ…

『青い花』ノヴァーリス 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 ある夜、青年ハインリヒの夢にあらわれた青い花。その花弁の中に愛らしい少女の顔をかいま見た時から、彼はやみがたい憧れにとらえられて旅に出る。それは彼が詩人としての自己にめざめてゆく内面の旅でもあ…

『薔薇日記』トニー・デュヴェール 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 眩ゆい陽光と熱気のなか、何の遠慮も、隠しだてもなく描かれた少年愛の世界──無垢な魂の際限のない性の形。 スペインの仮面の街、静かな夜の裏通りで、私は毎日少年たちを選ぶ。無邪気で飾り気のない少年た…

『毒の園』フョードル・ソログープ 感想

こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 ロシア前期象徴主義を代表する詩人・作家ソログープ。影絵やかくれんぼに夢中になる少年少女たち…..。汚濁に染まらない者たちは美しいまま醜い現実によって死んでいく。夢と現実の交錯、美と醜、生と死の対…

『オリエンタリズム』エドワード・ワディン・サイード 感想

こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 ヨーロッパのオリエントに対するものの見方・考え方に連綿と受け継がれてきた思考様式──その構造と機能を分析するとともに、厳しく批判した問題提起の書。 「オリエンタリズム」とは東洋趣味という意味合い…

『お目出たき人』武者小路実篤 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 自分は女に、餓えている。この餓えを自分は、ある美しい娘が十二分に癒してくれるものと、信じて疑わない。実はいまだに口をきいたことすらなく、この一年近くは姿を目にしてもいない、いや、だからこそます…

『ギルガメシュ叙事詩』(古代オリエント文学作品) 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 初期楔形文字で記されたシュメールの断片的な神話に登場する実在の王ギルガメシュの波乱万丈の物語。分身エンキドゥとの友情、杉の森の怪物フンババ退治、永遠の生命をめぐる冒険、大洪水などのエピソードを…

『一九八四年』ジョージ・オーウェル 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 〈ビッグ・ブラザー〉率いる党が支配する超全体主義的近未来。ウィンストン・スミスは真理省記録局に勤務する党員で、歴史の改竄が仕事だった。しかし彼は、以前より完璧な屈従を強いる体制に不満を抱いてい…

『高野聖』泉鏡花 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 魔と夢が交錯するエロスと幻想の世界!飛騨から信州へ、峠をたどる旅の僧が、美しい女の住む山中の一軒家で一夜の宿を乞う。その夜……。 ジャン=ジャック・ルソーの著作を発端として西洋で活発化したロマン…

『雁』森鷗外 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 生まれてすぐに母を亡くし、貧困の中で父親に育てられたおとなしい娘お玉、父親に楽をさせたいと高利貸し末造の妾となった。上野不忍池にほど近い無縁坂にひっそりと住むお玉は、やがて、毎夕の散歩の道すが…

『冬物語』ウィリアム・シェイクスピア 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 シチリア王レオンティーズは妻のハーマイオニと親友のボヘミア王ポリクシニーズの不義を疑い嫉妬に狂う。しかし侍女のポーライナから王妃の死の知らせが届き、後悔と悲嘆にくれる。時は移り、十六年後一同は…

『十二夜』ウィリアム・シェイクスピア 感想

こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 『十二夜』(Twelfth Night, or What You Will 十二夜、もしくはお望みのもの)は1600-1601年ごろに執筆されたと見られており、『ハムレット』の前、つまり「悲劇時代」の直前であり、「喜劇時代」の締め括…

『空騒ぎ』ウィリアム・シェイクスピア 感想

こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 青年貴族クローディオーと知事の娘ヒーローのめでたい婚礼の前夜、彼女に横恋慕するドン・ジョンの奸計から大騒動がまきおこる『空騒ぎ』。 貴族レオナートーは美しき娘ヒーローと、才気煥発な姪ベアトリス…

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